花を飾る 日常をホンノリと彩る…

花のお話 その45「美女もなびく藤の花 風になびくは藤波」



トピック イメージ 花 古事記の中にあるお話ですが、但馬の国に、光と花の香りに包まれているかのような美少女がいたそうです。名前は伊豆志乙女(イズシヲトメ)。若者たちは皆、彼女に恋をし、結婚を申し込みましたが、優しい伊豆志乙女は、彼らを傷つけたくない思いから、誰にも近づこうとはしませんでした。

ある時、土地の神である秋山之下氷壮夫(アキヤマノシタヒヲトコ)の弟神、春山之霞壮夫(ハルヤマノカスミヲトコ)が、当たって砕けろとばかりに伊豆志乙女に結婚を申し込むことを決意しました。そして母神のもとに向かい、相談をしたそうです。「どうすれば、私の心を伊豆志乙女に伝えることができるでしょうか。彼女の心を得る方法を私に授けてください」と伝えます。この辺り、神とはいえ、息子が恋愛のことで母親に相談するというのは、何というか、そういうものなのでしょうかねえ…。まあ、古事記の中の昔々の話ですから。でも、今でもありそうな…。

母神は息子の話を聞いて、こう答えました。「おまえが本当にその伊豆志乙女を愛しているのなら、ありのままの気持ちを伝えなさい。男なんだから正々堂々と行きなさい。だけど、身なりだけはちゃんとするように。私が手伝ってあげましょう」。母神はそう言って山に入り、藤の葛を両手にいっぱい抱えて戻ってきました。そして、それを木で叩き、水に晒して藤の葛から繊維を作り、衣服や袴、沓(靴)、弓矢まで作って、それを春山之霞壮夫に渡しました。優しいお母さまですね。

春山之霞壮夫は母の作ってくれた装束に身を包み、弓矢を手にして意を決し、伊豆志乙女に愛の告白をします。すると、母神が作ってくれた装束や、弓矢までが藤の花に包まれます。藤の花の香に包まれた春山之霞壮夫を思いを込めた視線を伊豆志乙女に送ると、彼女は恥じらいの面持ちでコクリと頷きました。春山之霞壮夫のプロポーズ大作戦は成功です! 二人は仲睦まじい夫婦になったということです。めでたし、めでたし。ちなみに、兄神の秋山之下氷壮夫はとっくに伊豆志乙女にフラれていたとか。

ここで、なぜ「藤」が登場するのかと素朴な疑問を持ってしまうのですけど、今の私たちは藤の花を観賞しますが、古くはその「葛(かずら)」の方が大切であったわけで、家を作る材料や仕事で使う頑丈な綱、衣服まで、生活に欠かせない素材だったのでしょう。万葉集にも「藤衣」という言葉が出てきます。この時代の人にとって「藤」とは大切な存在だったのでしょうね。平安の時代になると「藤見の宴」が盛んに催され、藤はその花の美しさ故にさらにその地位が高くなり、花色の紫は高貴のシンボルともなります。

万葉集の中で「藤」は24首登場するようですが、そのほとんど(18首)で「藤波」と表現されているようです。これは藤が風になびく様を「波」に見立てたのでしょう。万葉学者の研究によれば、この「波」というのは「常世波(とこよなみ)」で、人々は寄せて返す波に、常世と神々とを結ぶものとして畏怖の念を持っていたようです。そしてそれを「風になびく藤」の光景に感じたのでしょう。なんという繊細な感受性でしょうか。

先の古事記の一説も、藤という花が古来より日本人にとっては、美しいだけでなく、生活に密着した大事な花であったということを表しているように思います。この時代の藤は右巻きの「ノダフジ」で、左巻きは「ヤマフジ」。藤は日本の固有種です。

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