花を飾る 日常をホンノリと彩る…

花のお話 その49「沖田総司 辞世の句 闇にへだつや花と水」


前々回の「花のお話その47」で、土方歳三の詩について書きましたので、今度は新選組一番隊組長、沖田総司の詩です。悲しいことにこれは辞世の句ですけど。「動かねば 闇にへだつや 花と水」。これは、花が沖田総司自身で、水が土方歳三ということだそうです。花を自らに喩えるとはさすが美少年剣士として歴史に名を遺す沖田総司…。ちなみに、この辞世の句は「捏造」で、実際には存在しないと言われてもいるようです。更には沖田総司が美少年であったというのは講談など、後からの創作であったという説もあります。これは、牛若丸の源義経と同じですね。まあ、歴史は常に「誰かに創られるもの」だと思いますから、そこは置いといて…。

男であれ女であれ、自らを花と喩えるのはなかなかに艶っぽいことであると思います。そして、その詩を詠む者が想いを告げようとする相手がさらに自らの艶を深くするものだと思いますが、この場合は男性から男性へ…。万葉集の中でその「想い」をたっぷりと詰め込んでいるのは「相聞歌」ですけど、もともとは「お互いの安否を心配して訪ねあう歌」で、実際には殆どが「恋の歌」。有名なのは、万葉歌人のスーパースター額田王(ぬかたのおおきみ)の「茜さす 紫野ゆき標野ゆき 野守は見ずや 君が袖ふる」。その「返歌」は、皇太子大海人皇子の「紫の にほへる妹を 憎くあらば 人妻故に吾(あれ) 恋ひめやも」とちょっと艶に欠けるストレートな「返歌」ですね。故にあまり知られていないと思います。余談ですが、額田王は、大海人皇子の兄である中大兄皇子とも恋仲でした。さすが、日本史上絶世の美女…。

話がそれてしまいました。詩に対して詩を返すのは、より強い「想い」を託して返すものだと思いますが、沖田総司の土方歳三に対する「想い」のコアには何があったのでしょうか? と、一歩間違えれば(間違えなくても)少々下世話な勘ぐりになりそうですけど、そもそも武士の世では、ボーイズラブなど当たり前で、「お稚児さん」や「衆道(しゅうどう)、若衆道」など、けっこうお盛んであったそうです。おそらく、戦国武将の戦場(女性がいない)で醸成されたものでは。それを今の価値観で見ても、詮無いことでしょう。

そんな話も置いといて、純粋に土方歳三を思う沖田総司の「返歌」であるとして、なぜ土方歳三が「水」なのでしょうか。これは、「その47」にも書いた通り、土方歳三の「豊玉発句集」にある「さしむかう 心は清き 水鏡」に対する「返歌」であるからだそうです。ここでも、この詩は土方歳三のオリジナルではないという説もありますが、歴史上の真偽は学者の方に任せるとして、「水」である土方歳三に、「花」である沖田総司が、純粋に「相聞」の形ではないとしても、「返歌」を送り、それを辞世の句とするというのは、詩の出来は別としても、なにがしかの「想い」は確かに感じることができます。

「さしむかう 心は清き 水鏡」⇔「動かねば 闇にへだつや 花と水」。
この二つの詩を「想い」として意訳すれば…、
「あなた(たち)と差し向っている私の今の心は、清く澄んだ鏡のごとき水面と思ってください」
「そのあなたのために働き続けたい。いずれは闇(死)に、その水から花が隔てられてしまいますから」
単に「恋慕の情」だけではなく、そこはやはり天下にその名を轟かせた新選組の中心メンバーとしての矜持、忠誠心が伝わってきます。美しい一幅の絵のように。

歴史の真偽はどうでもいいのです。といって軽んずるつもりは毛頭ありません。また、あまりにきれいに伝えられているものを揶揄するつもりもありません。自らを「花」と喩えた沖田総司はその言葉に、自らの、まさに矜持と、忠誠、病に伏した無念さ、何とかしたい想いを籠めたのでしょう。そして、「水」である土方歳三にその想いを訴えた…、ということでしょう。そこに「花」というものが現れる時の人の想いを、この辞世の句から、様々に感じてみたいと思います。

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