花を飾る 日常をホンノリと彩る…

花のお話 その6「千利休と豊臣秀吉 一輪の朝顔」


千利休と豊臣秀吉との逸話(エピソード)は数々あります。「一輪の朝顔」はその一つです。ちなみに「逸話」とは、新明解国語辞典で引くと「その人の隠れた一面を知らせる材料となる、おもしろい話。(狭義では、謹厳で評判な偉人のそれを指す)」とあります。余談ですが、カッコ内の補足は「意外な事実」といった意味でしょうけど、まさに新解さん(国語辞典)の本領発揮といった説明です。また、「エピソード」を同じく新解さんで引くと「問題になっている人や物事に関する、ちょっとした話。(で、世間に紹介しておきたいもの)。逸話」、とあります。私自身、「逸話」とは、そのままを受け取る話ではなく、表現の良し悪しは別にして「箸休め」のようなもので、本筋から離れて多少は自由に思いを巡らせても良いものであると思っています。

千利休は織田信長と豊臣秀吉の二大天下人に仕え、茶道千家流の始祖となり、最後には豊臣秀吉の勘気を受け、切腹を申し付けられましたが、その原因は「後ろ盾である秀長が病没した」「大徳寺に自分の木造を秀吉が通る上に置いた」「天皇陵の石を勝手に持ち出した」「朝鮮出兵に反対した」等々あるようです。いずれが原因にせよ、秀吉の「黄金の茶室」と利休の「侘び茶」とではそもそもがかなりの両極にあり、それが互いの反発に及んだとしても不思議はありません。絢爛豪華を好んだ秀吉と、「これ以上は削りようのない、美しさと緊張感が共存する」ような侘びの世界を作り上げた利休。これは二人の「価値観」が全くの逆、相容れないほど互いに異質であったという事ではないでしょうか。更に付け加えれば、秀吉が求めたものは誠に「俗な価値観」であり、利休が求めたものは「新しい価値観」であった、と見る事ができます。時の権力者が、自分と違う「価値観」を持った者を警戒するのは歴史の必然で、それは排除へと向かいます。

その中で、タイトルにある「一輪の朝顔」の逸話が出てきます。利休がその庭に咲き誇った朝顔が見事なので、秀吉を「朝顔を眺めながらの茶会」に誘い、秀吉は「利休が誘うほどだから、さぞかし見事な朝顔であろう」と期待します。ですが、秀吉が利休の屋敷を訪れると、朝顔は全てその花を切られています。そして、一輪だけ、茶室に朝顔が飾られていました。一輪であるがゆえに、侘びの茶室を見事に飾る。これを見て、秀吉は利休の美学に感嘆したといいます。

しかし、私にはこの話、真偽のほどは別にして、違った二人の心が感じられます。確かに利休の美学的なものとしては理解できるのですが、相手である秀吉は天下人です。もし、秀吉がこれをこう言われているように感じていたとしたらどうでしょうか。「幾万もの首を刈り取り、一人咲いているのが、あなたである」と…。秀吉にも茶の美意識、趣味人としての鷹揚さはあったと思います。しかし、まだまだ戦国の世です。その中で人の心を様々に読み続けてきた二人にとって、それが一種の心理戦であったと仮定したら、利休は自分の美学を秀吉に「見せつける」と同時に、秀吉の「俗」をそこで露わにして見せたのではないでしょうか。別に、深読みをするつもりはありません。しかし、利休の、「朝顔を一輪だけ残して、他を全て切ってしまう」という行為がとても不自然に思えるのです。

茶室ではなるほど、一輪の花が見事にその美しさを見せたとしても、花を全て刈られた、美しさとは無縁な朝顔の景色もまた茶室の外にある訳です。どう考えても秀吉に対する何らかの思惑が利休にあったと思います。互いの心を読みあってわが世を築いてきた戦国のトップクラスの二人です。茶室での二人の姿を思い浮かべる時、穏やかさなどは想像できません。

とはいえ、その緊張した侘びの空間の中に一輪ある朝顔の「凛とした」美しさも同時に想像してしまいます。それはきっと、見事な青紫の朝顔ではなかったかと思えてしまうのです。


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