花を飾る 日常をホンノリと彩る…

花の詩紹介 花の詩10


 ※花の名前の()内は一般的な和名です

 フヨウ (フヨウ:芙蓉)
 
分類:アオイ目アオイ科フヨウ属
 
花期(路地・鉢物):7月~10月

フヨウ「枝ぶりの 日ごとにかはる 芙蓉かな」
 松尾芭蕉
「日を帯びて 芙蓉かたぶく 恨みかな」
 
与謝蕪村
「芙蓉さく 今朝一天に 雲もなし」
 宮紫暁
「松が根に なまめきたてる 芙蓉かな」
 
正岡子規
「物陰に 芙蓉は花を しまひたる」

 高浜虚子
「母とあれば われも娘や 紅芙蓉」
 長谷川かな女
「秋風が 目まぐるしくも 吹くと云ふ 草の中なる 紅芙蓉かな」
 与謝野晶子


 フヨウは、朝咲いて夕方には萎む一日花で、長い期間にわたって毎日次々と開花する花です。そんな芙蓉の花の特徴をシンプルにとらえたのが一番目の松尾芭蕉の詩でしょう。フヨウはハスの美称であることから、とくに区別する際には「木芙蓉(もくふよう)」とも呼ばれるそうです。花としては全くの別種ですけど。そんなフヨウの美しさを詠うとこうなるのでしょうか、四番目の正岡子規、五番目の高浜虚子の詩は、どこか心象風景を詠ったような感じで、ちょっと両名にしては珍しい趣のような…。最後の与謝野晶子の詩にはいつも思うことですけど、読む者の気分で如何様にも景色の変わる詩だなあ、と思います。彼女の激情ゆえでしょうか。


 コスモス (アキザクラ:秋桜 オオハルシャギク:大春車菊)
 
分類:キク目キク科キク亜科コスモス属
 
花期(路地・鉢物):7月~11月

コスモス「休む外ない雨の ひよろひよろコスモス」
 種田山頭火
「ほつとさいたか ひよろひよろコスモス」
 
種田山頭火
「誰もゐないでコスモスそよいでゐる」
 種田山頭火
「コスモスの 花あそびをる 虚空かな」
 
高浜虚子
「秋風に こすもすの立つ 悲しけれ 危き中の よろこびに似て」

 与謝野晶子
「こすもすよ 強く立てよと 云ひに行く 女の子かな 秋雨の中」
 与謝野晶子


 今回は同じ詩人の歌が連なりますが、コスモスは多くの詩人が詠んでいます。ですが、秋の空を背景にした鮮やかなコスモスが、頼りなく不安定な茎の上にフワリフワリと浮いている様をひょうきんに詠っている種田山頭火の詩がとても面白いのです。その光景を見事に切り取っているのが四つ目の高浜虚子の詩です。まさに、正岡子規の後継たる者の詩であると感じます。この意表をつくような結びの「虚空かな」が、一気に世界を広げ、コスモスのまさに「宇宙」を作り上げます。与謝野晶子は特に好きというわけではないのですが、やはり女性の感受性に訴えるのでしょうか、最後の詩の「女の子」はすべての女性のようであり、与謝野晶子自身でもあるような…。

 ヒヤシンス (ヒヤシンス:風信子、飛信子)
ヒヤシンス 
分類:キジカクシ目キジカクシ科ヒヤシンス属
 
花期(路地・鉢物):2月~4月

「ヒヤシンス 犬聞いてゐし わかるらし」
 
中村汀女
「母の声 子の声まじり ヒヤシンス」
 中村汀女
「いたづらに 葉を結びあり ヒヤシンス」
 
高浜虚子

「紫の ヒヤシンス泣く くれなゐの ヒヤシンス泣く 二人並びて」
 
与謝野晶子
「片恋の わが世さみしく ヒヤシンス うすむらさきに にほひそめけり」

 芥川龍之介
「ヒヤシンス 薄紫に 咲きにけり はじめて心 顫ひそめし日」
 北原白秋


 最後の北原白秋の詩の中にある「顫ひ」は「ふるい」と読み、はじめて心がふるえ始めた日の意味で、つまり、恋の始まりの日です。お相手は隣家の年上の人妻。この恋、ハッピーエンドとは行かなかったようです。まあ、不倫ですから。しかし、このヒヤシンスは「恋」の風情を感じさせるのでしょうか。芥川龍之介もそうですし、高浜虚子の詩にもその趣が感じられます。与謝野晶子はいつも通りマンマですね。あの薄紫がそのような情に通じるのでしょうか。一番目と二番目に続けてご紹介した中村汀女の詩は、ヒヤシンスを生活の風景の中にポツンと置いて、その周りに漂う生活の時間の中にあるものを詠っています。それがヒヤシンスの花に独特の余韻を感じさせています。
このように生活を捉える詠い方は、好きですね。

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