花を飾る 日常をホンノリと彩る…

花の詩紹介 花の詩5


 ※花の名前の()内は一般的な和名です

  アジサイ (アジサイ:紫陽花)  
  分類:ミズキ目アジサイ科アジサイ属
  花期(路地・鉢物):6月~7月
アジサイ イラスト
「紫陽花や きのふの誠 けふの嘘」
 正岡子規
「紫陽花も 花櫛したる頭をば うち傾けてなげく夕ぐれ」
 与謝野晶子
「森駈けてきて ほてりたるわが頬をうずめんとするに 紫陽花くらし」
 寺山修二
「世の中の ひとの心に ならひけん かはるにはや きあぢさゐの花」
 樋口一葉
「言問わぬ 木すらあぢさゐ 諸弟(もろと)らが 練りのむらとに あざむかれけり」
 大友家持(万葉集)

「あぢさゐの 八重咲くごとく弥(や)つ代にをいませ 我が背子 見つつ偲はむ」
 橘諸兄

 アジサイは日本原産の古い時代からの花です。万葉集でこのアジサイが詠われているのは五番目と六番目の二首のみです。不思議な事にその後、平安期の和歌集には一切この花は登場しなくなります(絵画も含めて)。鎌倉期に詠われるまで、400年以上も日本人に忘れられていたのでしょうか。ある説ですが、アジサイは開花してから花の色が変わっていきますから、それを「移り気」で不道徳と捉えられていたそうで、文学的な趣には向かない対象だったのでしょうか?。しかし、やはり不思議です。とはいえ、確かにどの詩にも共通して、その「移り気」故か、少々明るさのない趣になっています。それをサラリと洒脱に詠ったのが一番目の子規の詩でしょう。ちなみに、アジサイの葉には青酸性の成分が含まれていますので、食べると中毒を起こします。ご用心。

  アヤメ (アヤメ:菖蒲、文目、綾目)
  分類:キジカクシ目アヤメ科アヤメ属
  花期(路地・鉢物):5月~6月

アヤメ イラスト「壁一重 雨をへだてつ 花あやめ」
 上島鬼貫
「片隅に あやめ咲きたる 門田かな」
 正岡子規
「野あやめの 離れては濃く 群れて淡し」
 水原秋桜子
「あやめあざやかな 水をのまう」
 種田山頭火
「降らいでも ぬるる名のある あやめ哉」
 加賀千代女
「庭下駄に 水をあやぶむ 花あやめ 鋏にたらぬ 力をわびぬ」
 与謝野晶子

「ほととぎす 鳴くや五月の あやめ草 あやめも知らぬ 恋もするかな」
 よみ人しらず(古今集)

 やはり季節故でしょうか、アヤメは雨(水)とともに詠んだ詩が多くなります。三番目の詩は「雨の中での」光景のように思えます。やはりこの花は雨の中で映えるのでしょうか。二番目の子規の詩は、本当にいつもながら、サラリと景色を切り取って見せてくれます。「いずれがあやめかかきつばた」という、美しい女性を表現する言葉がありますが、アヤメ類の総称としてハナショウブをアヤメと呼ぶ事が多いようです。ショウブと呼んでハナショウブを指すこともあります。菖蒲湯等のショウブは別種で、カキツバタも含め、一般にはけっこう同じように見られていますけど、アヤメの特徴は花弁の元にある網目状の模様(文目)です。最後の詩の「あやめも知らぬ」の「あやめ」はそれが転じて「物の道理、けじめ」等の意味があります。それも忘れるほどの「恋」なのでしょう。

  ユリ (ユリ:百合)
  
分類:ユリ目ユリ科ユリ属
  
花期(路地・鉢物):4月~8月 ※品種によって異なります
ユリ イラスト
「妹は薔薇赤く 姉は百合白し」
 
正岡子規
「畑もあり 百合など咲いて 島ゆたか」
 
正岡子規
「ひらいてゆれてゐる 鬼百合のほこり」

 
種田山頭火
「ひとすじに 百合はうつむく ばかり也」

 
加賀千代女
「道の辺の 草深百合の 花笑みに 笑みしがからに 妻というべしや」
 
よみ人しらず(万葉集)
「油火の 光に見ゆる 我がかづら さ百合の花の 笑まはしきかも」

 
大伴家持(万葉集)


 百合を詠った万葉集の詩の中に「笑み」の表現が入っているのは興味深い事です。この「笑み」が純粋に今の私たちの感情と同じであるかどうかは分かりませんが、少なくとも「好ましい感情」でしょう。それがどのようなものかは想像するしかないのですけど、おそらく「愛らしい、愛しい」では…。一番目の子規の詩は「なるほど」の一言です。三番目の山頭火の詩の「ほこり」とは、花粉の事でしょうがその姿が目に浮かびます。四番目の詩、加賀千代女には、いつもながらその見つめる眼の優しさを感じざるを得ません。ちなみに、哀しい事ながら、この清楚なユリが猫にとってはこの上なく危険な「自然の一輪」となります。「猫のユリ中毒」にはご注意ください。

  クチナシ (クチナシ:梔子)
  ●分類:アカネ目サンタンカ亜科クチナシ連クチナシ属
クチナシ イラスト  ●
花期(路地・鉢物):6月~7月

「薄月夜 花くちなしの 匂ひけり」

 
正岡子規
「宵のくちなしの花を 嗅いで 君に見せる」
 
尾崎放哉
「何だかなつかしうなる くちなしさいて」
 種田山頭火

「今朝咲きし 山梔子の又 白き事」
 
星野立子
「夏ちかく 君見むきわに わづらいて 小床に嗅げる くちなしの花」
 
与謝野晶子
「おもふ事 いはねば知らじ 口なしの 花のいろよき もとのこゝろも」
 樋口一葉


クチナシの名の由来は、果実が熟しても裂けたり弾けたりしないので、そこから「口が無い=クチナシ」というのが一般的でしょう。漢字では「梔子」ですが「山梔子」とも書かれます。この花の特徴はあの無垢の白い色と香りですけど、どの詩も殆ど「そのマンマ」の詩です。与謝野晶子と樋口一葉の詩が「口なし」の意にかけて詩を詠んでいますが、この花は背景を絡ませるよりも、そのままの「花の美しさ」を読んだストレートな詩が多いですね。捻る必要もない清楚な花の「色」と「香り」が、詩人の心を素直に捉えるのでしょうか。あの尾崎放哉でさえ、可愛らしい詩を詠んでいます。

  アサガオ (アサガオ:朝顔)
  分類:ナス目ヒルガオ科ヒルガオ亜科サツマイモ属
  
花期(路地・鉢物):7月~9月
アサガオ イラスト
「朝顔に つるべとられて もらい水」
 加賀千代女
「朝顔や 吹き倒された なりでさく」
 小林一茶
「朝顔や 我に写生の 心あり」
 正岡子規
「父子で住んで 言葉少なく 朝顔咲いて」
 
尾崎放哉
「はかなくて 過ぎにしかたを 思ふにも 今もさこそは 朝顔の露」
 西行

「見し折りの つゆ忘られぬ 朝顔の 花の盛りは 過ぎやしぬらん」
 
源氏物語)

 万葉集に山上憶良が朝顔を詠んだ詩がありますが、これはキキョウであるとされています。朝顔は平安時代初期に薬草として遣唐使によって日本に伝わったようです。源氏物語や枕草子にも登場し、厳島神社に奉納されている平家納経には、青色の朝顔が描かれていて、これが日本で最初に描かれた朝顔のようです。薬草として日本に渡ってきた朝顔ですけど、その儚くも美しい姿が日本人の心を、即、捉えたのでしょうか。朝顔といえば何と言っても一番目の加賀千代女の詩でしょう。「朝顔や」で始まる千代女の自筆の詩もありますが、これは後年、彼女が自ら詠い直したもののようです。朝顔といえば「豊臣秀吉と千利休」の話が有名です。その儚い美しさがこの逸話に、より深いコントラストを与えているように思えます。


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