花のお話 その36「ゲーテとチューリップ」


■言葉に含まれる思いとしては、小林秀雄が「当麻(たいま)」の中で語った「美しい花がある。花の美しさと言うようなものは無い」と通じるものがあると感じますが、ゲーテの言葉の方が優しいですね。小林秀雄の言葉にはいつも思うのですが、「言い切る」といえばよいのか、非常に鋭利なものを感じてしまいます。いずれにしても、人と花の関わりをあのゲーテも語っていたとは。
■それで、少し興味が湧いて更に調べてみると、ゲーテの意外な側面を知りました。ゲーテと云えば「若きウェルテルの悩み」「ファウスト」等の作品から大文豪というイメージしか持っていませんでしたが、自然科学者でもあったという事には少し意外な感がありました。政治家でもあり法律家でもあり、レオナルド・ダ・ビンチや、日本で云えば空海や南方熊楠など、一つの枠では語れない「知性」を持つ存在というのはどの時代にも生まれているものなのですね。
■それはさて置いて、ゲーテの「自然科学」に対する思想の中核には「原型(Urform)」という概念があるそうで、生物にはその骨格器官のもとになっている「元器官」というものがあり、脊椎がそれにあたると考えていたそうです。その考えを植物にも応用し、「植物変態論」の中で、全ての植物は一つの同じ「元植物(de:Urpflanze)」から発展したものとし、植物の花を構成する花弁や雄しべなどの各器官は、「葉」が様々な形に変化し、集合してできた結果であると考えたようです。

■それで、ゲーテの「植物変態論」を調べてみると、その中に似たようなチューリップがありました。これはそれほど珍しい事ではないようですが、例えばマルバルスカスの葉は、どう見ても葉なのですけど、これは枝が変化したものであるとか。ですから、マルバルスカスの花はその葉の裏側に咲きます。自然の造形の面白さと云えばそうなのですけど、その植物にとっては必然からそのような形状になったのでしょう。不思議がっているのは人間の勝手…?。ゲーテは水彩画にそのチューリップの姿を残していますが、そのゲーテが観察したものと同じようなチューリップを眺めているのは、なにか妙な感じです。あの大文豪とチューリップがイメージとしては結びつきにくい…。
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★花の詩紹介 花の詩1
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■これからギターを始められる方のご参考にでもなれば。
