花を飾る 日常をホンノリと彩る…

花のお話 その38「神は移ろいやすいものだけを美しくした」



トピック イメージ 花 「花のお話 その36」で、あの大文豪ゲーテとチューリップとの関わりについて書きました。チューリップというより「植物」に関してのゲーテの研究ですが、その観察の一つにチューリップが入っていたという事です。その時に色々と調べ物をしていると、次のような言葉を見つけました。「神は移ろいやすいものだけを美しくした」。これはゲーテの詩集「四季」の夏の部に記された詩の中の一節のようです。それぞれの本で訳し方が微妙に違うようなのですが、そこに詠われている詩の大意は、「美がジュピターに尋ねた。どうして私は移ろいやすいのですか。すると神(ジュピターでしょう)が、私は移ろいやすいもののみを美しくした、と答える」。他には「滅びゆくもののみを美とした」という訳もあるようです。私の中では、「移ろう」も「滅ぶ」も、日本人が持っている伝統的な精神性である「無常観」と結びつきます。

ちなみに、ジュピターとはローマ神話の「ユーピテル(ラテン語: Juppiter)」の英語発音で、天空の神。ギリシャ神話のゼウスと同一視されるようです。つまり、最高神であり、創造神であるということでしょう。その神に、「美という(詩の中での抽象的な)存在」に問われ、答えた言葉はまさに「無常」ではないでしょうか。つまり「無常なるものは美しい」という意にも捉えられます。ゲーテのその詩に出会った時、思ったことは「まさに…」、です。

ゲーテの詩の上に色々な言葉が重なってきます。鴨長明の方丈記にある「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」。そしてあの織田信長が好んだと言われる幸若舞の「敦盛」の「人間五十年 下天のうちを比ぶれば、夢幻のごとくなり。ひとたび生を得て滅せぬもののあるべきか」の一節。その信長の後継となった天下人、豊臣秀吉の辞世の句「露と落ち 露と消えにし我が身かな 浪花の事は夢のまた夢」、小林秀雄の「当麻(たいま)」の中で語る「美しい花がある。花の美しさと言うようなものは無い」という言葉、等々。小林秀雄に関しては私流の解釈で、「花の美しさは、無常の中のある瞬間に現れるもの」と。

「移ろい」の中には「美が咲く」瞬間があれば、「滅ぶ」瞬間もあります。故に、ある「ひととき」咲く花に美しさを感じるのだと思います。花だけではなく、ガラス細工や磁器、陶器、絵画、書でさえも、千年を生き抜くものもありますが、それは時代時代の僥倖の中で生きていくもので、「脆さ」の上に成り立っているからこそ美しいのだと思います。ゾンザイな言い方ですが、どれほど優れた書画であれ、マッチ一本で消え去ります。どれほど美しさを誇る陶磁器でさえ、落とせば割れてしまいます。その中で一瞬一瞬の繋がりの中を生き延びる「美」は確かにありますが、「無常」からは逃れられず、一世を風靡した「美」も時代が滅ぼすこともあります。

話を「花」に戻せば、以前に「枯れない処理をされたバラの花」を見ていると、どうにも落ち着かなくて、人に譲った事を書きました。確かに「美しい真紅のバラ」でしたけど、言葉は悪いのですが「花のミイラ」のようで、飾る気にはなれませんでした。見る度に落ち着かなくて…。頂き物で、申し訳なかったのですけど。

花はやがて枯れてしまい、その美しさを失ってしまいます。しかし、またいずれ咲いて、その「美しさ」を現します。「移ろう」「無常」とは、ネガティブなことも含みますが、そこには「再生」という、まさに再び生まれて来るものがあります。ゲーテの詩の「神は移ろいやすいものだけを美しくした」とは、この「再生」という事を現しているのではないでしょうか。何かに「執着」したり、「永遠」を望んだりすれば、「再生」という「美」と出会えなくなるでしょう。「美」とは儚く脆い、「一瞬・刹那」の中に現れるものであると思います。

などと、柄にもなく冗長に能書きめいたことを書きましたが、つまりは、「何故、花を美しいと感じるのか?」という素朴な疑問を、いつも考えているだけのことです。そこにゲーテの詩が目について、その言葉の力にちょっとした "Inspire" を受けてしまいました。

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