花のお話 その5「日本人が好む花は」


■江戸末期(から明治初期)に、江戸の染井村に住んでいた造園師や植木職人達によって品種改良され、サクラの名所、大和の吉野山にちなみ「吉野桜」と呼ばれていたようですが、それではヤマザクラと混同されるため、明治期に、染井村の名を取り「染井吉野」と呼ばれるようになったそうです。ちなみにサクラの語源は日本神話の木花之開耶姫(コノハナノサクヤヒメ、もしくはサクヤビメ)のサクヤが語源であるという説があります。
■では、もっと昔の人はどんな花を好んでいたのでしょうか。万葉集を見てみると、その歌に一番多く登場しているのは、「萩(ハギ)」「梅(ウメ)」「橘(タチバナ)」だそうです。サクラ(ヤマザクラ)はそれらに比べると少ないようです。しかし平安期になると「右近の橘、左近の桜」となり、サクラが登場しますが、これは内裏の紫宸殿の事ですから、一般にはどうだったのか…。
■それでは、現代人はどうでしょうか。手元の資料はちょっと古く、平成21年の農林水産省のものなのですが、その中での「切り花類の需要量および国内消費」を見ると、「キク」が断然トップで、「バラ」「カーネーション」「ユリ」の順になっています。少し意外だったのはそれに続いて健闘(?)しているのが「トルコギキョウ(ユーストマ)」でした。キクがトップなのは「お供え」として使われることもあるからでしょうね。NHK放送文化研究所が2007年に行った「日本人の好きな花」の意識調査では、やはり「サクラ」が断然トップで、続いて「チューリップ」「バラ」「コスモス」「ヒマワリ」「ウメ」「ラン」「スズラン」「ユリ」「アジサイ」と続きます。
■古代の人が好んだのは「野にある花」のようですし、ソメイヨシノも飾る花ではありません(枝を手折ると木が弱ります)。上記の資料から一概に推し測ることはできませんが、今も昔も、日本人は淑やかで情緒的な花を好むのではないかという気がします。いずれにしても、自然の中で四季折々の花を楽しめるというのは、この国に住む者にとって、何とも恵まれた環境であると思います。その中で育まれた情緒もあるのでしょう。野にある花も美しいのですが、それを切り花として生活の場に飾るというのは、「活け」という手間を少しかけて、自然から「貸してもらう」という事だと思います。
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★花の詩紹介 花の詩8
★花の詩紹介 花の詩4
★花の詩紹介 花の詩1
★花の詩紹介 花の詩6
★花の詩紹介 花の詩2
■これからギターを始められる方のご参考にでもなれば。
