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花のお話 その50「花にも通じる歌の本體(ほんたい) タヽ心ニ思フ事ヲイフ」



トピック イメージ 花 このサイトでは俳句も和歌・短歌も「詩」という言葉で括っています。特にこだわりがあるわけではないのですが、「歌」でもよいのですけど、"Song" ではありませんし、言葉を紡いで生まれる一編の思いは「詩」と呼ぶ方がふさわしいと思っているだけで、形式で区分することをしないだけです。それはさて置いて、タイトルにある「本體(ほんたい)」とは「本体」であり、「そのものの本当の姿」「正体」のことです。ですから、「歌の本體」とは、「歌そのものの本当の姿」の意味です。

この言葉は本居宣長の歌論「排蘆小船(あしわけおぶね)」の中で語られている言葉です。抜き出してみます。「歌ノ本体、政治ヲタスクルタメニモアラズ、身ヲオサムル為ニモアラズ、タヽ心ニ思フ事ヲイフヨリ外ナシ」。訳すまでもないと思いますが、「歌の本当の姿というものは、政(まつりごと)や身を修めるためにあるのではなく、ただその心に思うことをありのままに(飾ることなく)詠むことにある」ということです。それはまさに、本居宣長の唱える「やまと心」であり、感じるままの心でものごとを受け入れる「日本古来」の感受性を「歌の正体である」としています。

この「排蘆小船」は花そのものとは関係ありませんが、やはりそこに本居宣長の詩「敷島の 大和心を 人問わば 朝日ににおう 山桜花」を重ねてみたくなるのです。詩は何かのために作為を持って詠うものではなく、心の欲するままにその想いを紡ぎだすもの。「やまと心」とはなんであるかと人に問われれば「朝日に映える山桜」と答えるという宣長の詩は、万葉の心をそのまま受け継いだような「それ以上は分解不可能」な人の想いというものを表していると思います。

花もそうでしょう。この「花のお話」を書いている動機も、「どうして花を美しいと思うのだろう?」とう素朴な疑問にあります。答えはいくつもあるでしょう。しかし、そのコアになるものは「前言語的」な、まさに赤ちゃんの仕草に通じるものがあると思います。惹かれるものに視線を向け、近寄って、手を差し伸ばすような。そこに饒舌な意味性を説く必要はありません。感じるままに、というより、芽生え始めた「心」のままに惹かれていく、ということでしょう。それは大人になっても、「美しさ、心惹かれるもの」に対する心のコアとなっているように思います。余談ながら、それを忘れた時に「心を装い始める」のでしょうか。

宣長はさらにこうも言っています。「其内ニ政ノタスケトナル歌モアルベシ、身ノイマシメトナル歌モアルベシ、又国家ノ害トモナルベシ、身ノワザワイ共ナルベシ、ミナ其人ノ心ニヨリ出来ル歌ニヨルベシ」。「その中には、政道の助けとなるものもあるだろう、我が身を戒めるものもあるだろう、また国の害となるものもあるだろう、その身の災いとなるものもあるだろう、それらはみなその心が織り成す想い(より生まれた歌)によるものであろう」。詩(歌)は装うこともできます。それも歌。しかし、その心をそのままに詠むのであれば、それは自らの想いに偽るものではなく、まさに「ありのまま」に詩となり、人の心を共振させるのでしょう。ここは、良くも悪くも、となるのでしょうけど。

牽強付会を恐れずに言うなら、「花」を愛でるときに「偽り」などというものがあるはずもありません。好き嫌いはもとより誰にもあるでしょうが、「花」が心を惹きつけるのはまさに「あるがまま」。本居宣長が万葉の歌を理想としたのは、次第に形式を整え、技法を洗練させ、一番要となる「人の心」から離れていく歌に対して「危機感」のようなものを持っていたからだと思います。それは畢竟、人の心を「偽り」に導くものであると思います。「あるがまま、感じるまま」というのはなかなかに難しいことのようにも思えますが、だからこそ、花を眺めるひと時を大切にしたいと思います。

春されば まづ咲くやどの 梅の花 独り見つつや 春日暮らさむ
山上憶良(万葉集)

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