花を飾る 日常をホンノリと彩る…

花のお話 その63「続 世界が驚いた園芸大国日本 江戸の古典菊」



花のお話 これまでキクについては何度かこの編に書いてきました。「その12」の「「弔いには何故、白い菊なのか?」、「その43」の「菊は花の隠逸(いんいつ)なるものと定められてより」等です。ご興味をお持ちになられ、お読みいただければ嬉しく思います。他の記事の中でもキクについては折に触れて書きましたけど、このキクはバラやユリなどの、柳田國男がいうところのいわゆる「ハレ(晴れ)とケ(褻)」でいえば、「ハレ」の特別な日の花というより、日常の中にある花であると言えるのではないでしょうか。キクの出荷量が一番多いという事からも、生活の中に溶け込んでいる花だから、と思います。お供えの花ということもありますけど。

余談ですが、今でも催されているようですが、私が子供の頃は「菊人形」というものがけっこう身近な催事としてあったように思います。人形の顔と手足以外の衣装となる部分を、様々なキクを組み合わせて、その着物の模様のような彩りを鑑賞する催しですが、何故か私はそれが「怖くて」、菊人形展の会場で泣き出したこともあります。キクは奇麗なのですが、人形の造作の方が恐かったのでしょう。もちろん、今はそんなことありません。

そんな日常の中にあるキクですが、これは日本原産の花ではなく、律令期(7世紀後期から10世紀頃)に中国から日本に伝わった花のようです。中国では紀元前の文献にもその記録がありますが、どうも本来は観賞用の花というよりも「神聖な力を持った薬」として扱われていたようです。日本では平安時代の宮中で鑑賞されていたらしい歌が残っています。古今和歌集でもキクが詠われています。ちなみに、万葉集に「百代草(ももよぐさ)」として登場している植物がキクではないかという説があるそうです。その説によれば、それが中国に渡って品種改良され、遣唐使によって日本に戻ってきたとされているようです。いずれにしても、キクには不老不死のシンボル等、「神聖」な花といった感があったようです。今でも、薬草的に扱われたり、その香りの鎮静効果で人の心を落ち着かせている花といったイメージがあります。

キクは「洋菊」と日本の「和菊」に分けられ、その「和菊」の中に「古典菊」があります。江戸期の日本の園芸文化の中でキクは大きな変貌を遂げます。その古典菊は、千葉県佐倉市の国立歴史民族博物館「くらしの植物苑」での「伝統の古典菊」展という催事で150を超える品種が展示されていますから、そこで鑑賞することができます。どの古典菊も、江戸期の園芸文化によって品種改良されたもので、その造形美は見事というか、日本の江戸期に花開いた園芸文化の華やかさには驚かされてしまいます。幕末の江戸を訪れた外国人の記録にもその驚きが記されているようで、まさに世界も驚いたということです。

古典菊はその産地で分かれるようですが、「江戸菊」「伊勢菊」「美濃菊」「嵯峨菊」「肥後菊」などなど。直径が20cmにも及ぶ「大菊」、そして「中菊」「小菊」。キク一種ですが、百花繚乱と言いたくなるようにその姿の多様さには目を奪われます。その中で「江戸菊」が古典菊のスターであり、キクといえば「江戸菊」を指し、「正菊」とさえ呼ばれたそうです。国立歴史民族博物館「くらしの植物苑」で実際に栽培されている方の言では、「江戸菊は、咲いた後、1週間くらいして花弁が変化し始めるのが見どころです」とか。

そうした園芸文化を支えたのは、一般庶民の日常に浸透していた「植物を世話する楽しみ」に加え、旗本である武士階級の「部屋住みである次男・三男」という知識層が、アルバイト的な目的も兼ねてその教養と時間をかけた成果でもあるのでしょう(「その52」、「世界が驚いた園芸大国日本 自然を愛でる江戸の園芸文化」より)。そうした園芸文化の背景として、やはりこの国の持つ「自然の豊かさ・四季」があるでしょう。

近くの家で、熱心に毎日盆栽の手入れをされている方がいらっしゃいます。先日はその鉢にサツキが満開で咲いていました。通りがかりの借景です。そのお宅にはいくつもの鉢が並び、どれもこれも、丹精を込めて作られた見事な一品。この盆栽も、日本が世界に誇る園芸文化です。最近は庭のない家が目立つようになり(庭をコンクリートで固めている)、ちょっと景色としては「奥行き」を失っている艶の無さを感じてしまいます(もっとも、人の家ですからそれは人の自由なのですけど…)。切り花だけではなく、活け花にしても盆栽も、品種改良という世界までそれほど熱を入れずとも、季節が移り変わるごとに様々な花や木を披露してくれるこの国にいることを楽しみましょう。

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