花を飾る 日常をホンノリと彩る…

花の詩紹介 花の詩4


※花の名前の()内は一般的な和名です。
  サクラ (※サクラは総称、個々に名前あり:桜)
  分類:バラ目バラ科サクラ亜属サクラ属
  ●花期(路地・鉢物):2月~5月

サクラ イラスト「願わくは 花の下にて春死なん そのきさらぎの望月の頃」
 西行
「敷島の やまと心を人とはば 朝日ににほふ山ざくら花」
 本居宣長
「世の中に 絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」
 在原業平

「さまざまの こと思い出す 桜かな」
 松尾芭蕉

「花の色は 移りにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせしまに」
 小野小町
「久方の 光のどけき春の日に しづ心なく 花のちるらむ」
 紀友則

 日本の場合、法律で定められた国の花というのは無いそうですが、一般的にはキクと、このサクラが日本を象徴する花として用いられています。花見で楽しむ「ソメイヨシノ」は江戸末期から明治初期に登場し、明治中期から多く植えられた木です。ですから、この六つの詩に出てくるサクラは「山桜」です。しかし、サクラに対する日本人の「想い」というのはやはり特別なものがあるのでしょうね。平安の王朝文化の中で「技巧」に走った和歌の名手たちも、殆どがストレートに詠っています。五番目の松尾芭蕉の詩などは、日常会話のように詠んでいます。桜の詩では何と言っても一番目の西行の詩が好きです。サクラの花とは日本人にとってそのような存在なのでしょう。二番目の詩の「やまと心」とは、本居宣長がいうところの「日本人の感受性」です。

  ヤマブキ (ヤマブキ:山吹)
  ●分類:バラ目バラ科バラ亜属ヤマブキ属
  花期(路地・鉢物):4月~5月
ヤマブキ イラスト
「山吹や 葉に花に葉に 花に葉に」
 炭太祇(たんたいぎ)
「ほろほろと 山吹散るか 滝の音」
 松尾芭蕉
「山吹や 小鮒入れたる 桶に散る」
 正岡子規
「山吹の立ちよそいたる山清水 汲みに行かめど道の知らなく」
 高市皇子(たけちのみこ:万葉集)
「春雨の 露のやどりを吹く風に こぼれてにほふ 山吹の花」
 源実朝
「花咲きて 実は成らずとも長き日(け)に 思ほゆるかも 山吹の花」
 よみ人しらず(万葉集)
「七重八重 花は咲けども山吹の 実の一つだになきぞ哀しき」
 兼明親王(後拾遺和歌集)

 ヤマブキは日本原産の花です(英名:Japanese Rose)。一重咲きのものには実ができますが、八重咲きのものにはできません。雄しべが花びらに変化して花粉ができないからだそうです。ヤマブキは古い時代から日本人に親しまれ、あの鮮やかながら清楚な花の色が創る自然の「景色」は、万葉の昔から詠われています。三番目の子規の詩はそれを更に至近距離から見事に捉えています。ヤマブキといえば七番目の詩でしょう。これは「景色」ではなく、「思い」を詠っていますが、これが「寓意」として有名な太田道灌の逸話となっています。ご近所で咲いている花は一重のものが多いようです。派手さはありませんが、必ず目に留まる花です。

  ツツジ (ツツジ:躑躅)
  分類:ツツジ目ツツジ科ツツジ属
  
花期(路地・鉢物):4月~5月

ツツジ イラスト「百両の 石にもまけぬ つつじ哉」
 小林一茶
「つゝじ咲て 石移したる 嬉しさよ」
 与謝蕪村
「下り舟 岩に松あり つゝじあり」
 正岡子規
「紫の 夕山つつじ 家もなし」
 正岡子規
「庭芝に 小みちまはりぬ 花つゝじ」
 芥川龍之介
「傘ふかう さして君ゆく をちかたは うすむらさきに つつじ花さく」
 与謝野晶子
「水伝ふ 磯の浦みの 岩つつじ 茂(も)く咲く道を またも見むかも」
 日並皇子宮舎人(万葉集)

 ツツジは、ウメやモモ、そしてサクラの開化を迎えて「百花の春」を迎え、ハナミズキを待って、そのフィナーレを飾るともいえる花だと思います。何となく初夏の趣を運んできてくれるこの花を詠う時、詩人の心にはそれぞれに、春の「嬉しさ」、春の去る「寂しさ」が織り込まれるのでしょうか。三番目と四番目の子規の詩にはその両方が感じ取られます。六番目の与謝野晶子の詩は「をちかた(遠くの、向こうの)」に映る人への思いをツツジに託して詠っているのでしょう。それは去る人への寂しさかも…。最後の詩は、万葉の昔もまた同じで、去りゆく我が身の寂しさをツツジの咲く景色に問う、かなり悲しい詩です。「もう見られないかも」という思いの。

  フジ (フジ:別名、ノダフジ:野田藤)
  分類:マメ目マメ科マメ亜科フジ連フジ属
  
花期(路地・鉢物):4月~5月

フジ イラスト「念仏に 季はなけれども 藤の花」
 正岡子規
「行く春の 後ろを見せる 藤の花」
 小林一茶
「瓶にさす 藤の花ぶさみじかければ 畳の上にとどかざりけり」
 正岡子規
「品高き ここちこそすれ藤なみの なみにはあらぬ花の色かな」
 樋口一葉
「しののめの あかりに踏みし路ゆゑに 蝶とおもひし藤の花びら」
 与謝野晶子
「藤の花は しなひながく 色こく咲きたる いとめでたし」
 清少納言(枕草子)

 フジも先のツツジと同じように、初夏の趣を運んできてくれる花だと思います。六番目の小林一茶の詩はまさにそれです。そして、どの詩も、やはりあのフジの、なんとも言えぬ品のある色を詩人たちは詠おうとしているように感じられます。人間には作り出せない、まさに「自然の色」です。ちなみに、フジは日本の固有種(日本原産)で、二種類あります。ひとつは花の蔓が「右巻き」で長いもの。これは「ノダフジ:野田藤」と呼ばれています。野田とは大阪に在る地名です。もうひとつは花の蔓が「左巻き」で短くずんぐりとしているもの。これは「ヤマフジ、ノフジ」と呼ばれています。

  ヒナゲシ (ヒナゲシ:雛芥子、雛罌粟)
  ●
分類:ケシ目ケシ科ケシ属
  ●花期(路地・鉢物):4月~6月

ヒナゲシ イラスト「ひな芥子は 花びら乾き 茎よわし」
 芥川龍之介

「散る時も開く初めのときめきを 失わぬなり雛罌粟の花」
 与謝野晶子
「ああ皐月(さつき) 仏蘭西(フランス)の野は火の色す
       君も雛罌粟(こくりこ) われも雛罌粟(こくりこ)」
 与謝野晶子
「恋しげに覗けるは誰れ 靄立てる夜明けの家の ひなげしの花」

 与謝野晶子
「けふの世に 歩み入りける日の初め かすかに見ゆる ひなげしの花」
 与謝野晶子
「力拔山兮気蓋世(わが力は山を抜き、覇気は世を覆う)
 時不利兮騅不逝(今、時は私に利なく、馬も進もうとしない)
 騅不逝兮可奈何(馬が進もうとしないのをどうすればよい)
 虞兮虞兮奈若何(愛しい虞よ、そなたをどうすればよいのか)」

 項羽(垓下の歌)

 スタジオジブリのアニメにもなった「コクリコ坂から」のコクリコはフランス語で「ヒナゲシ」の事です。漢字で書くと「雛罌粟」となり、重たいですね。詩は与謝野晶子が並んでしまいましたが、この花のもつ淡い風情が、やや激情家の彼女(失礼)を優しくするのでしょうか。二番目と四番目の詩には「少女」のような横顔を感じます。一番目はちょっと身も蓋も無いような詩ですが、表現として面白いと思います。六番目はあの「垓下(がいか)の歌」です。項羽の楚軍が漢軍に追い詰められ、その心情を項羽が詠った詩です。「騅(すい)」とあるのは、項羽の愛馬の名前。この「垓下の歌」で有名なのは四行目。読み下すと「虞よ虞よ、汝を如何せん」。ヒナゲシは虞美人草(ぐびじんそう)とも呼ばれます。自刃した虞のお墓にこの花が咲いたのが由来だそうです。

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